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Surface water plugging world !



The Splasher

その昔、糸が絡んだルアーでうっかりいいスズキを釣ってしまったジモティー田中さんが、
それをヒントに一攫千金を狙った渾身のパニックベイト。(ごめんなさい)
むしろ当時、このデザインを初めて目にしたシーバスマンの方がパニクってしまったのではないか?
「どーやって使うの?」
田中さんは強調されます。「速く巻くんだ」と。
当時、カウントダウン時代の東京湾フッコの影響でデッドスローがトレンドでしたから、
片瀬の流れに、花水の波間に、相模川の流れにいきなり水柱が立ち、釣れる魚はビッグフィッシュばかりという、
これに本能をわしづかみにされた男たちがどれだけいたことか。
箱買いするやつとかいました。
このプラグがシーバスがトップで釣れることを教えてくれたのです。
相模川で逆引きできる唯一のプラグでした。
いわゆる川でのスキッド(ドリフト)ゲームとは、このプラグから生まれた釣り方です。

スキッド&アシッドのスキッドはもちろんここからとったものです。
アシッドはドラッグの古典。そのゲームの麻薬性、中毒性をあらわしたものです。
ザ・スプラッシャーは古くて風にも弱い、あたりはずれも普通ですが、
これほど愛に溢れ、みんなに愛され、情熱的で、
こんなにビッグワンの口に似合うプラグが他にあるでしょうか?






SUPER ZARA SPOOK

天国にルアーをひとつだけしか持っていけないとしたらコレしかありません。
なぜザラが釣れるのか?それは楽しいから。
楽しいから釣れるという、
ボラカラーとアジカラーの差を語るようなヘタレには絶対にわからない理論と、
トップウォーターゲームのすべてをザラは持っている。

ドッグXみたいな動きですねって褒めてくれたおやじは痛かった。
痛いと言えばピロピロジグ。
100歩譲ってかっこ悪すぎる。あんまりだ。
川でアレを投げてるのを見たときはルアー屋さんたち、ついに墓穴を掘ったと思いました。
今、売る人も買う人も、釣りの美しさ、自然を前にしたときの潔さというものを放棄してしまっている。
釣り人たちは、いまこそそれを取り戻すべきだ。
右を向いても左を向いても似たようなルアーしか見あたらない釣り具屋にはもう飽きた。
原点には必ず理由がある。なぜトップなのか?
いまこそザラに戻るべきだ。
それに、彼女と釣り具屋に行ったとき、ザラなら彼女の好きな色がきっとある。






HAMMER

ビッグワンのシャローパターンはこのプラグから始まった。
湾奥系の人たちに浮力的に魚がノリづらいと言われることも多かったが、それは70センチくらいまでの話で、
そんな小魚はノらなくて良いというのがハンマーヘッドだった。
最初に削られた3本は最終デザインとほとんど変わりなく、
それらは増田本人とおれ、そしてウェイディング中の事故で亡くなった故大橋さんの手に。
だから手元に残ったこの1本を見てると大橋さんのあの笑顔を思い出してしまい涙が出そうになる。

メケメケはデザインの新鮮さからパクリも山盛りだったが、ハンマーはそうでもなかったようだ。
パクリはその人たちのプライド次第だし、アメリカンオールドルアーの中には実際メケメケライクなプラグはすでにある。
バッハの時代にはあらゆるリズムとメロディーが出尽くしていたというが、
それをルアーに置き換えると、ヘドンの時代にはすでに、すべてのプラグのアイデアはあったのだろう。

話は戻って、故大橋さんはこれを使って得意の片瀬でけっこう釣っていたらしいが、
おれはその1シーズン、ほったらかしで使わなかった。
顔がブサイクでいまいちだな、と思っていたからなのだが、
後になって、結局このプラグで世界記録魚を手にした。






Vampire

L.D.S(リビングデッドスペシャル)ヴァンパイヤ。
非対称デザイン。
これやターン、SP鮎蔵を見てヘドンのプロウラーを思い浮かべた人は好き者に違いない。
武蔵とは以前、同じクラブにいて、その頃から歌って踊れるビルダーとして有名だったが実力はすでに日本一だった。
しかし、カクテルをつくるバーテンダー選手権でも日本一になったことはあまり知られていない。
そして、いろんな意味でプロの中のプロとは彼のことだ。

去年仕事で、ドイツで行なわれたDrupa(最新の印刷機材展のようなもの)に、
日本から出展するハイテク印刷のモチーフとして彼のプラグを選んだ。
きれいな色使い、セルロースセメントのやさしい表情。そして抜群の造形センスとテクニック。
これを撮影して日本の誇るハイビジョン印刷でポスターをつくってヨーロッパ人たちに見せつけるのだ。
ちなみに前回のモチーフは国分寺の沢田先生の色鮮やかサーモンフライ。
武蔵には撮影用のスペシャルモデルとして、やや色を強めにしたオイカワカラーのミノーなどを何本か頼んだ。
それを、いまだに表現力だけはデジタルカメラに譲らないポジフィルムをわざわざ使って撮る。
一点のくすみもない、魚釣りの道具が宝石になった瞬間だ。

撮影後。おれはヴァンパイヤを引き取り、あとはクライアントのお宝箱へ。
武蔵は「アレ、気合いれてつくったから使わない方がいいよ」と言う。
世界級の舞台でモチーフとして堂々と出せるのは、
日本のトップビルダーはすなわち世界のトップビルダーだからだ。
そんな彼の言う事は聞くしかあるまい。
だから福井の極道社長が量産してくれなかったら、一生使わずじまいだった。

おれのL.D.Sのデビューは、とある夏の房総野池のフローター。
仲間ふたりがチャングリにクラシックルアーで古典的に苦戦するなか、
おれだけ爆釣してしまい、釣れすぎという理由でその日で封印した。
彼の師匠はレッドペッパーなどでご高名な南さん。
これもまた、ティムコがやらなかったらおれら一般人は触れる機会はなかっただろう。
武蔵のプラグを見てると遠くにそのDNAが見える気がします。







K-TEN

風に強く、誰が投げても失敗しない。トラブルも少なくてタフ。
ニコチンカラーにいぶされたルアーがたくさんぶらさがった部屋で二宮さんは淡々と語ります。
「おれはK-TENで輸入ルアーの値段を下げた。そこは感謝してよね」と。
つまり、K-TENの高性能と比べ、それだけ輸入ルアーは高かったのです。
二宮さんは博学で、学者のようで、遊びを心から愛していて、
遊びのためにはいろんなモノを犠牲にできる方かも知れません。
だからこの天才的なアイデアもその遊び心の中からでてきたものなのでしょう。
本気で風と戦った世界で最初のプラグとして、歴史に残すべき1本です。
そしてこのK-TENをきっかけに、いろんなものを捨てなければならなかったプラグの暗黒時代、
飛距離の時代に突入していきます。






MAGNUM ZARA SPOOK

それぞれの世界の境界線。水面をステージに異生物を結びつけるもの。
それは人間の想像力と魚の本能。
ペンシルベイトがなぜ魚を狂わすのか?

最初にして最もシンプルなデザインの中に、
ルアーの秘密がすべて隠されているような気がするのだ。
だから漁師のシンボルをツノだとすれば、これはもうゲームフィッシングのシンボルと言っていいだろう。
あなたがこのビッグペンシルでビッグワンを釣ったとき、
ルアーってなんなのか?、その答えに近づけるかもしれない。
そしてスズキという魚を少し知るかもしれない。

ひとつ言えることは、このプラグに出る魚はでかい。
ここで私たちは、網やエサを使うより、
ルアーフィッシングはターゲットもサイズも選びやすいということを思い出さないといけない。
ゲームフィッシングとルアーフィッシングはここでも交差するのだ。

シャローではオフショア用にデザインされたプラグがどうもしっくりこない。
それは、オフショアにはオフショアの、シャローにはシャローの距離感というのがあって、
それぞれ似合う顔というのがあるからだ。




つづく(かも)




プラッガーの名に賭けて、
ピロピロジグ、ゴムなど、これらを恥ずかしげもなく投げ、巻きとることは、
銭湯で小さいポコチンをぷらんぷらんさせてる厚顔無恥なおやじに等しい。
トップで釣れる魚をトップで釣らないのは、裸の女を目の前にして抱きつかないインポ野郎と等しい。
トップウォータープラッギングとは、それほど本能的で、刺激的な遊びなのだ。

トップウォータープラッガーは水深を聞かない。
目の前に並べられた情報と道具を選ぶのが今の釣りのスタイルだとすれば、
トップウォータープラッギングは釣りではない。
理屈ではなく、自分の意思で見つけ出し、自然と一緒につくり出す遊びだ。
わたしたちはぷらんぷらんおやじでも、インポ野郎でもない。
スキッド&アシッドは、これからも心臓がドキドキする限り、
トップを投げ続けます。





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